黒豚の王様、ブランド豚肉の元祖として有名な「かごしま黒豚」
「かごしま黒豚」とは、鹿児島県内で飼育された純粋バークシャー種の豚肉のことをいいます。「かごしま黒豚」と言う名称は1999年に商標登録されています。
日本各地にも黒豚ブランドの豚肉(彩の国黒豚、讃岐黒豚など)は存在しますが、「かごしま黒豚」は別格の扱いです。
実際に「黒豚」と検索してもほぼ「かごしま黒豚」しかヒットしません。
よって「かごしま黒豚」は黒豚の王様といっても過言ではないのです。
鹿児島県特有の大地だから生産ができた「かごしま黒豚」
「かごしま黒豚」のルーツは、江戸時代に琉球王国(今の沖縄県)から薩摩藩の島津家久が移入したといわれている黒豚。
鹿児島県といえば「桜島」が有名です。現在でも定期的に噴火活動している桜島。そして火山の噴出物からできた土地が「シラス台地」。
鹿児島県は本土の約52%をシラス台地が占めています。
シラス台地は雨水が地中に浸透しやすく稲作などには適さないため、水はけのよい土地が栽培に適しているサツマイモ栽培が盛んになりました。
そして雑食性で何でも食べる豚がサツマイモを食べることで、鹿児島県はサツマイモ生産と共に豚肉の生産が盛んになりました。
明治時代になるとイギリス原産のバークシャー種と呼ばれる豚が導入され、もともと鹿児島県で飼われていた琉球由来の豚と品種改良が始まり、現在でもより良い黒豚を求めて品種改良は進められています。
日本初のブランド豚肉「鹿籠豚(かごぶた)」誕生
戦後になり1949年(昭和24年)頃から鹿児島県産の黒豚の東京出荷が始まります。
鹿児島県枕崎市に当時あった南薩鉄道の鹿籠駅から、黒豚は生きたまま東京へと出荷されます。
そしてその旨さと肉質の良さから評判になると、貨車に鹿籠駅の車票が付いていた事から、自然と「鹿籠豚」と呼ばれるようになります。
全国で初めてのブランド豚肉が誕生しました。
「鹿籠豚」は最高級の「かごしま黒豚」として現在でもその名を残しています。
黒豚ブームから白黒論争を経て現在の「かごしま黒豚」確立へ
1960年代には東京を中心に空前の黒豚ブームが起きます。
東京のお肉屋さんでは黒豚の争奪戦が起こり、鹿児島県の黒豚を取り扱っていることがそのお肉屋さんのステータスになっていました。さらに鹿児島県黒豚生産者協議会が認可した「黒豚取扱店舗」の看板が本来2000円のものが闇取引で10万円の値がついていたという伝説もあります。
しかし1970年代になると生産効率の良い白豚(三元豚)の導入が全国的に活発になります。
鹿児島県でも白豚の導入が徐々に進みつつありました。
黒豚を推進する鹿児島県畜産会・鹿児島県畜産課、白豚導入推進派の県庁の出先機関である農業改良普及所と畜産試験場が激しい論争を巻き起こします。
畜産農家のみならず近隣の農家も巻き込んでの論争は3年以上続きました。
最終的に1974年(昭和49年)に鹿児島県は黒豚の振興を決定するのですが、これは「量より質の時代が必ず来る」と信じた生産者や関係者の存在がありました。
これ以降鹿児島県を挙げての黒豚の普及活動や品種改良が積極的に行われるようになり、1999年(平成11年)に「かごしま黒豚」は商標登録されました。
生産方法に定義を設けておいしさ追求「かごしま黒豚」
「かごしま黒豚」には生産に関して厳しい基準が設けられています。
- バークシャー種(アメリカバークシャー種を除く)であること
- 肥育後期にさつまいもを10%~20%添加した飼料を60日以上与えること。
- 肥育期間を通常の豚より長くとっていること
「かごしま黒豚」はバークシャー種に限定されています。バークシャー種は発育が遅く、産子数も少ないですが、肉質は歯切れが良く旨味をたっぷり含んでいるのが特徴です。
飼育するバークシャー種は鹿児島県のみで品種改良されたものに限定されており、他県には流出できない規定もあります。
そして鹿児島県ならではのさつまいもを飼料にしている点。さつまいもを与えることで脂肪の質が良くなり、さっぱりとしまりのある食味になります。ビタミンEも増加することも確認されています。
そして「かごしま黒豚」は他の豚の1.2倍から1.5倍の肥育期間を設けていて、出荷まで大体230〜270日間くらいかかります。長く肥育することで肉質がしまってくるそうです。
引用:鹿児島県黒豚生産者協議会より
このように歴史を重ねながらおいしさを追求した「かごしま黒豚」は全国的にも認知され、またおいしい豚肉としても有名になりました。
日本国内のみならず現在では香港やシンガポールなどのアジア圏を中心に輸出されていて、海外でも人気のブランド豚肉です。
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