ビールを飲む和牛として一躍有名になった「松阪牛」
「松阪牛」(まつさかうし)は兵庫県の但馬牛や他地区の黒毛和牛を三重県内で肥育したブランド牛肉の名称です。日本三大和牛に挙げられるブランド牛肉で、きれいな霜降りから「肉の芸術品」の異名を持っています。
牛の食欲増進のため?にビールを飲ませるという飼育方法がメディアで取り上げられ一躍有名になり、国内のみならず海外でも有名なブランド牛肉です。
「松阪牛」のネット上の口コミ評価は…
※楽天市場・Yahoo!ショッピングなどのレビューから独自に算出
予想通り肉の柔らかさに対する賛美の声がとても多いです。
さらに脂の旨味やサシの奇麗さなど肉の芸術品呼ばれるだけのことはあります。
ただし脂が苦手な方は否定的な意見もあります。
コメント数も他のブランド牛肉より圧倒的に多く、さすが日本三大和牛といった感じです。
一頭5000万円の値が付いたこともある「松阪牛」
三重県の松阪地域では江戸時代から但馬牛が農耕用の牛として飼われていました。
幕末に神戸港が国際港となり「神戸牛」が注目されるようになると、松阪で飼育された牛も神戸港から「神戸牛」として流通していきました。
明治時代になり文明開化とともに牛肉を使った料理、特に「肉鍋」が流行します。牛肉の流通量が増えると読んだ家畜商の山路徳三郎氏という人物が、松阪で育てた肉牛を東京まで引いて売りに行ったそうです。この光景を「東海道牛追い道中」と呼ばれたそうです。
この「東海道牛追い道中」が松阪牛誕生の基礎になったそうです。
そして松阪で精肉店「和田金」営む松田金兵衛氏が良質な牛肉を近隣農家から仕入れ、直営の料理店ですき焼きを提供するようになると、伊勢神宮の参宮客などから口コミで広がり、やがて財界人や作家などが雑誌などで「和田金」のすき焼きを紹介すると「松阪牛」が世の中に広まっていきました。
そして1935年(昭和10年)に日本初の全国レベルの肉牛コンテスト「全国肉用畜産博覧会」が開かれます。現伊勢市の農家が育てた雌牛が最高の賞である「名誉賞」を獲得すると「松阪牛」の名は日本中に知られる契機となったのです。
さらに1949年(昭和24年)から毎年行われている「松阪牛」の品質を競う品評会「松阪肉牛共進会」の存在も大きなものとなっています。
この品評会は予選から行われ、そして本選では品評会の最優秀賞にあたる「優秀賞一席」をかけて選び抜かれた50頭の「松阪牛」が専門家による厳正な審査を受けます。
そして「優秀賞一席」が決められるのですが、注目は品評会後にすぐ行われる競り市。
2002年(平成14年)第53回の「松阪肉牛共進会」で優秀賞一席に選ばれた「よしとよ」号が5,000万円という過去最高値で落札されました。
このような話題性も相まって「松阪牛」はブランド牛肉としての地位を高めていきました。
「松阪牛」の中でも最高級の「特産松阪牛」とは
「松阪牛」として流通するための条件・定義を見てみましょう。
まず「松阪牛」は他のブランド牛肉のようにA-5、A-4ランクだから「〇〇牛」として流通できます、などの基準はありません。松阪牛生産区域で生産された和牛はすべて「松阪牛」として市場に出回ります。
※「松阪牛」購入した際の証明書。「品質規格」「個体識別番号」上の画像のように記載されています。
※生後12ヶ月齢までに松阪牛生産区域に導入され、導入後の移動は生産区域内に限る。
引用:松阪牛協議会HPより
昔から兵庫県の但馬牛の子牛を買い付け、肥育してきたという歴史もあり、基本的には他県で生まれた子牛を独自の肥育技術で大きく育てて売るというスタンスです。
※肥育とは…子牛に肉をつけて食用にするために大きくすること。短期間でたくさんの肉をつける方法と、時間をかけてゆっくりと育てて上等の肉をつくる方法の2つに分かれます。「松阪牛」は後者の方法を取っています。
ちなみに「松阪牛」は広大な牧場でのびのび放牧させるということはまずありません。気晴らしに散歩や放牧させることはあっても基本的には牛舎で暮らします。この方法で子牛を大きくするのです。
そして「松阪牛」の中でも
「特産松阪牛」・・・但馬系の黒毛和種の雌牛を松阪牛生産区域で900日以上肥育したもの
本来肉牛を長期肥育すると健康面でのリスクが大きくなります。さらに長く牛舎にいることでコストもかかります。
よって長期肥育には熟練の技術が必要になります。「特産松阪牛」は「松阪牛」の生産全体の4%ほどにしか過ぎません。よって希少価値が高まり通常の「松阪牛」より高価になります。
「特産松阪牛」は「神戸牛」なども登録されている農林水産省、地理的表示(GI)保護制度の登録産品の一つです。
登録理由の中にも「本来非効率である長期肥育に関しての独自の技術伝承方法」がブランド牛肉としての価値を高めている、というようなことが書かれています。
まるでチョコレート?牛肉なのにとろけるような口どけの「松阪牛」
「松阪牛」の牛肉の特徴として
- 肉眼で見えないほどの細かいサシ(霜降り)
- 和牛香は、甘くコクがある上品な香り
- 一般的な和牛より不飽和脂肪酸を豊富に含むため、脂肪の融点が低く、舌触りがよくとろけるような食感
脂の融点 | |
松阪牛 | 17.4℃ |
和牛 | 25.9℃ |
交雑種 | 29.9℃ |
乳用種 | 30.2℃ |
※交雑種とは…雑種のこと。一般的には乳牛と肉用牛をかけ合わせたもの
引用:松阪牛協議会HPより
なぜ口どけがなめらかでとろけるのか?の謎も脂の融点を見れば一目瞭然。
さらに科学的な分析により「松阪牛」には悪玉コレステロールを低下させ、血液をサラサラにする効果があるといわれている「不飽和脂肪酸」が多く含まれていることがわかりました。
「松阪牛」のお肉は長年の肥育技術の向上の成果がおいしさにも表れているのですね。
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